2004.01.07号
Vol. 6 ファスト・フード業界に変革もたらすファスト・カジュアル

2004年、外食業界で注目されるのは「ファスト・カジュアル」という新しいカ
テゴリーです。米国が発祥で、最近日本でも耳にするようになりました。しか
し「ファスト・フードとファミリーレストランの中間」と意訳されることが多
いようで、実際のコンセプトとは少し異なります。この意味を取り違えると、
全く違った業態になってしまいます。

混迷を極める日本のマクドナルドに対し、米国のマクドナルドは今期、販売不
振に歯止めがかかり、回復の兆しが見え始めました。その要因のひとつには、
新メニューの「ミール・サイズ・サラダ」(主食になるサラダ)などの好調ぶ
があります。これはいま米国で人気急上昇中に新業態「ファスト・カジュア
ル」から、マックが学んだ成果といえるでしょう。

日本でも米国でも、ファスト・フードの客離れの原因には、使っている食材へ
の不信、加工済みの商品を温めるだけという機械的な調理、栄養バランスの偏
り−−などといったイメージの低下があります。その弱点をついたのが、ファ
スト・カジュアルのメニューコンセプトなのです。一見ファスト・フードと同
じようなセルフサービスかセミセルフ形式ですが、食材は加工品を使わず生の
状態から、健康や安全に留意し、電子レンジなどを使わずに丁寧に手づくりし
ていることを前面にアピールしています。

具体的に、ファスト・カジュアルのメニューコンセプトの特徴を大きく物語っ
ているのが、メキシカン料理の「Baja Fresh」
(バハ・フレッシュ、http://www.bajafresh.com/)です。

○FOOD CANNOT BE MADE AT MICROWAVE SPEED
 当店は注文後、生の材料から丁寧に造り上げるので、少々時間がかかりま
 す。調理済みの食材を電子レンジで温めるだけのファーストフードとは違い
 ます。

○NO CAN OPENER
 当店の食材は缶詰などの保存食料品を使わず、すべて生の素材です。ソース
 もすべて店内で生の素材から造り上げます。

○NO FREEZERS
 ファスト・フードのように冷凍食材は使わず、生の食材から調理します。

○NO LARD
 動物性油脂を使わないので、健康的です。

○NO MSG
 うまみ調味料などのごまかしを使わず、自然のうまみを組み合わせておいし
 い味を実現します(米国ではうまみ調味料を摂取すると、赤面や動悸が早く
 なったり、発汗する等のアレルギー症状を訴える人がおり、うまみ調味料を
 いやがる傾向がある)。

ファスト・カジュアルの業種は、ベーカリーカフェ、ハンバーガー、スープサ
ラダ、イタリアン、アジアン、メキシカン、ベーカリー、惣菜等と幅広く、客
単価は6〜9ドル。ディナーにも利用できるよう軽いアルコールもあります。

米国でこのカテゴリーは、まだ外食全体の売上の2%を占めているに過ぎませ
んが、2002年の外食成長率が4.5%に対して、ファスト・カジュアルは15〜20%
の伸びと成長率が高いことが注目されます。特に18才〜34才の平均年収7万5千
ドルという、所得が高くて食に敏感な層の支持を集めているのが特徴です。

あるアンケートでも、10人中3人は、ナショナルブランドのファスト・フード
・チェーンにロイヤリティを感じないが、地域限定で規模も小さいファスト・
カジュアル・チェーンの「パネラ・ブレッド」や「イン・アン・アウト」など
には、高いブランドロイヤルティを感じているという結果が出ています。
Food104マガジンの「米国外食情報」でも、これらチェーンの好調ぶりを伝えて
きました。

危機感を強めた大手ファスト・フードは敏感に対応、ノウハウを取り入れるた
め、資本力の小さなファスト・カジュアル・チェーンと提携、または買収し始
めました。マクドナルドの場合は、グロサリーチキンの「ボストン・マーケッ
ト」、サンドイッチの「プレタマンジェ」などを傘下に入れたのはそのためで
す。こうした成果から生まれたのが、ヘルシー志向の強い「ミール・サイズ・
サラダ」です。

日本ではこのファスト・カジュアルにもっとも近いのが、モスバーガーでしょ
う。一時はマックの低価格戦略に引きずられましたが、こうした米国の動きに
いち早く目覚めました。昨年話題になった1個580円という高級バーガー「匠
味」は、品質・鮮度、手作り感にこだわり、15分という待ち時間にもかかわら
ず大ヒット。同社はこれで確かな手ごたえをつかんだことでしょう。対する日
本のマックも「マック・ダイニング」で高級バーガーを販売したものの惨敗で
した。ファスト・カジュアルのコンセプトを理解していなかった例といえるで
しょう。

ファスト・フードはこれから、健康的なメニュー、魅力的なメニューを導入し、
低価格から高付加価値商品にシフトしていかないと、イメージの回復はできま
せん。とくに日本でマックがこれだけ転落したのには、食文化の違いもあると
いえます。日本人にとって主食は米飯。ハンバーガーが国民食となっていれば、
こんなに落ち込むこともなかったかもしれません。

日本人はハンバーガーを日常食としてはではなく、イメージで食べていた。デ
ィスカウント戦略によってイメージが低下した今、さらなるプラスアルファが
必須になっています。米国のファスト・フード業界を変えたファスト・カジュ
アルが、日本で真の意味を発揮し、新たなニーズを創出できるか。今年は大い
に注目されるところです。


(王利彰)